海綿体への注射でEDは治せる？治療の効果や副作用を解説

海綿体に直接注射するED治療は2種類ある

ED治療の一環として、海綿体（陰茎海綿体）に直接注射する方法があります。

海綿体とは男性の陰茎内部にある円筒形の組織です。性的刺激が加わると海綿体が血液で満たされて陰茎が大きく硬くなり、勃起状態が維持されます。

EDの主な原因の一つは、性的刺激を感じた際に海綿体へと流れる血液が不足し、十分な硬さを得られないことです。

海綿体へ直接注射する以下の治療方法によって海綿体への血流を改善できると、EDを克服できる可能性があります。

ただし、上記の治療方法はED治療薬を服用できない方や、治療の効果を得られなかった方が次の治療方法として選択するものです。

EDはほとんどの場合、ED治療薬を服用することで改善できます。

海綿体への注射はあくまで身体と薬の相性が悪い場合や、薬では改善できないほど重症なEDの場合に検討される治療法です。

ED治療が初めての方はまず医師に相談し、性行為前に飲むだけで効果が期待できるED治療薬からスタートすることをおすすめします。

【医師からのコメント】

持病や他の薬剤との飲み合わせの関係でED治療薬が服用できない方や、ED症状が強く薬の効果が感じられない方がいらっしゃいます。

そのような患者さまから、陰茎海綿体注射や幹細胞培養上清液注射のご相談をいただくことがあります。

陰茎海綿体注射：性行為の直前に打つ自己注射

陰茎海綿体注射とは、性行為の直前に「プロスタグランジンE1（PGE1）」と呼ばれる薬剤を自身で注射する治療法です。

PGE1には血管拡張作用があり、注射後10分以内に効果が現れ、少なくとも30分以上勃起が持続するといわれています（※1）。

有効率は非常に高く、日本では77％、海外では82％の有効率が報告されています（※2）。

ただし、日本国内では未承認のため、治療のリスクを十分に理解し、医師の指導のもとで正しく実施することが大切です。

（※1 参考）Investigation of erectile dysfunction. Diagnostic testing for vascular factors in erectile dysfunction
（※2 参考）東邦大学医療センター大森病院｜陰茎注射（陰茎海綿体自己注射）

陰茎海綿体注射が適しているのはこんな人

陰茎海綿体注射の主な対象は、ED治療薬や陰圧式勃起補助具が効かない、または使用できない方です。

「ED診療ガイドライン」の治療アルゴリズムでは、ED治療薬の効果を判定した後、陰茎プロステーシス移植手術（人工のインプラントを海綿体内に挿入する手術）より先に行うべき治療法とされています。

たとえば、ED治療薬を飲んでも十分な勃起が得られない方や、心臓病や高血圧などの持病がありED治療薬を服用できない方に適しています。

陰茎海綿体注射の副作用・リスク

陰茎海綿体注射の主な副作用は以下のとおりです。

※1

副作用はほとんどの場合軽度ですが、症状が長く続く場合は持続勃起症や海綿体線維症のリスクがあります。

※1

持続勃起症はとくに危険です。4時間以上勃起が続くと海綿体が線維化し、最悪の場合は陰茎の壊死につながります。

2時間以上勃起が収まらない場合はすぐに医療機関を受診し、緊急処置を受けてください。

（※1 参考）Efficacy and Safety of Intracavernosal Alprostadil in Men with Erectile Dysfunction | New England Journal of Medicine

陰茎海綿体注射の費用

陰茎海綿体注射は自由診療のため、クリニックによって費用が異なります。

薬代は1回あたり5,000円から10,000円程度が相場です。ただし、診察料や自己注射の指導費用などが別途かかる場合もあります。

費用の詳細は、直接クリニックに確認しましょう。

また、陰茎海綿体注射の薬剤を通販で購入することは非常に危険です。

通販で購入した薬剤は安全性や効果が保証されないだけでなく、不衛生な針を使用することによる感染症のリスクも高まります。

陰茎海綿体注射は、信頼できる医療機関から処方を受けましょう。

幹細胞培養上清液注射：根本治療が期待できる再生医療の一種

幹細胞培養上清液注射は、幹細胞を培養して得た上清液を陰茎海綿体に注射することで、細胞の修復や血管の再生を促す再生医療の一種です。

幹細胞が持つ再生能力を活用して、EDの根本的な改善を目指します。

幹細胞培養上清液には、細胞の成長や再生を促す成長因子が豊富に含まれています。

たとえば、上皮成長因子（EGF）や血管内皮細胞成長因子（VEGF）、繊維芽細胞成長因子（aFGF）などです。

これらの成長因子が細胞の活性化や新しい血管の形成を促し、持続的な効果をもたらすといわれています。

幹細胞培養上清液注射が適しているのはこんな人

以下に当てはまる方は、幹細胞培養上清液注射を検討する価値があります。

幹細胞培養上清液注射は「さまざまなED治療を試したけど駄目だった」「ED治療のためなら費用は惜しまない」という方に適した治療法です。

逆に「ED治療は初めて」「費用はなるべく抑えたい」という方は、低価格で始めやすいED治療薬をおすすめします。

幹細胞培養上清液注射の副作用・リスク

幹細胞培養上清液注射の主な副作用は注射に伴う痛みや出血、腫れなどです。副作用の症状は数日から1週間程度続くこともありますが、ほとんどは軽度で自然に収まります。

幹細胞培養上清液は人間の幹細胞から精製されるため、アレルギーや拒否反応のリスクも限りなく低いとされています。

ただし、幹細胞培養上清液は現在のところ未承認の治療法です。そのため長期的な安全性や効果についてはデータが不足している部分もあります。

治療を受ける際には医師と十分に相談し、リスクを理解した上で慎重に判断することが大切です。

幹細胞培養上清液注射の費用

幹細胞培養上清液注射は再生医療の中でも先進的な治療法のため、費用はほかの治療と比べて高額な傾向にあります。

1回あたりの治療費は50,000円から140,000円が相場です。

なお、1回の治療で効果が見られる場合もありますが、3～5回の治療が必要となるケースもあります。

治療を受ける際には医師と十分に相談し、自分の症状や予算に適した治療計画を立てることが大切です。

初めてのED治療には内服薬が推奨されています

海綿体への注射治療は、あくまでED治療薬が服用できない場合の代替策です。

「ED診療ガイドライン」では、最初のED治療はED治療薬が推奨されています。ED治療薬は服用するだけでほとんどの方が効果を得られ、安全性も高いからです。

現在国内で承認されているED治療薬は以下の3種類です。

	バイアグラ	レビトラ	シアリス
主成分	シルデナフィル	バルデナフィル	タダラフィル
効果が現れるまでにかかる時間	約30分～1時間	約15～30分	約1～3時間
効果の持続時間	約3～5時間	約5～8時間	約30～36時間
食事による影響	出やすい	やや出にくい	出にくい
費用相場（1錠あたり）	25mg：1,300円〜1800円 50mg：1,800円〜2,200円	10mg：1,500円〜1,800円 20mg：1,700円〜2,000円	10mg：1,500円〜1,800円 20mg：1,700円〜2,000円

なお、ED治療薬は医師の処方が必要な処方箋医薬品に指定されています。個人輸入や自己判断での使用は避け、必ず医師の指導のもとで使用してください。

【医師からのコメント】

陰茎海綿体への注射治療は効果が見込める治療法ですが、学会のガイドラインではまずED治療薬を試してみてから検討すべきとされています。

「持病でED治療薬が飲めない」といったことがなければ、まずは服薬治療を優先するようにしましょう。

まとめ

海綿体へ注射するED治療は2種類あります。

一つは性行為の直前に自己注射する陰茎海綿体注射です。高い有効率が報告されていますが、副作用やリスクに十分な注意が必要となります。

もう一つは幹細胞培養上清液注射です。細胞の再生を促す効果が期待できますが、先進的な治療のため長期的な効果や安全性についてはデータが不足しています。

いずれの注射も未承認治療のため、治療方法の選択は医師と十分に相談し、リスクを理解した上で慎重に行いましょう。

ED治療をまだ受けたことがない方には、手軽で安全性が高いED治療薬をおすすめします。

当院では、さまざまなED治療薬を処方しております。ぜひお気軽にご相談ください。