薬剤性EDとは?勃起不全の原因となる薬や治し方を解説
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更新日:2024年11月24日 公開日:2023年12月27日
「ある薬を飲み始めてから勃起力が低下した気がする」とお悩みの男性もいるのではないでしょうか。
特定の薬を常用することで、薬剤性EDを発症する可能性があります。薬剤性EDとは、薬の副作用として起こる勃起不全です。
今回は薬剤性EDの概要と原因になりえる薬剤、治し方を解説します。
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この記事の監修者
ユナイテッドクリニック総医院長
細田 淳英
【経歴】
平成15年3月 帝京大学医学部卒業平成15年5月 帝京大学医学部付属病院勤務
平成19年4月 帝京大学ちば総合医療センター勤務
平成22年4月 山王病院勤務
平成25年10月 池袋ユナイテッドクリニック開院
目次
薬剤性EDとは?薬の副作用として発症するED
薬剤性EDとは、継続して服用している薬の副作用として起こる勃起不全のことを指します。
持病の治療で薬を飲んでいる方が勃起力の低下を感じた場合、薬剤性EDを発症しているかもしれません。
薬剤性EDは、適切な対処をすれば治る可能性がある病気です。「歳のせいかも」「疲れ・ストレスのせいかも」と放置せず、まずは受診することをおすすめします。
【医師からのコメント】
薬剤性EDの主な症状
薬剤性EDの主な症状には、下記のようなものがあります。
- 勃起しない/しづらい
- 勃起はするが、硬さが足りない
- 挿入時は勃起しているが、途中で勃起が収まる(中折れ)
- 朝立ちしない
- 性欲を感じにくい
EDの症状は「勃起しない」だけではありません。特定の薬を内服する前よりも勃起力が低下したり射精に至らなかったりする場合、薬剤性EDの可能性があります。
【医師からのコメント】
ED症状でお悩みの方で常用薬を服用している場合は、医師の診察を受けていただくことを強くおすすめします。
薬剤性EDの原因となる代表的な薬剤
薬剤性EDの原因となる代表的な薬剤には、下記のようなものがあります。
- 降圧剤
- 抗うつ薬
- 前立腺肥大症治療薬(薄毛治療薬)
詳しく解説します。
1.降圧薬
高血圧の治療に使われる「降圧剤」のいくつかは、EDを引き起こす可能性があるといわれています。
降圧剤は血圧を下げる薬全般を指しますが、有効成分によってメカニズムが異なるため、すべての降圧剤がEDを引き起こすわけではありません。
高血圧の治療に用いられる下記の薬剤は、勃起機能への悪影響を示唆する報告が多いといわれています。
薬剤 | 主な製品名 |
---|---|
利尿薬 | ・フルイトラン ・べハイド ・ヒドロクロロチアジド ・フロセミド ・スピロノラクトン |
β遮断薬 | ・アテノロール ・メトプロロール ・カルベジロール ・ビソプロロール |
Ca拮抗薬 | ・ニフェジピン ・アムロジピン ・ニカルジピン ・ジルチアゼム |
※1
男性31〜65歳を対象にした海外の研究では、降圧薬の非内服者のED罹患率は19.8%だったのに対し、内服者のED罹患率は40.4%でした(※1)。
ただし高血圧そのものが、身体的な要因で起こる「器質性ED」のリスクファクターである(※1)ため、実際に降圧剤の副作用でEDになっているかどうかは特定しにくいです。
高血圧を治療中の方は、薬剤性EDだけでなく器質性EDの可能性も考慮する必要があります。
(※1 参考)日本性機能学会/日本泌尿器科学会|ED診療ガイドライン
(※2 参考)NIH|Factors affecting the increased prevalence of erectile dysfunction in Greek hypertensive compared with normotensive subjects
2.抗うつ薬
抗うつ薬や抗不安薬は、薬剤性EDを引き起こす代表的な薬です。
うつ病を患っている場合、精神的な理由で心因性EDを発症することもありますが、薬剤性EDである可能性も十分に考えられます。
精神疾患の治療に用いられる下記の薬剤は、ED発症と関連があるといわれています。
薬剤 | 主な製品名 |
---|---|
セロトニン再取り込み阻害薬(SRI) | ・レクサプロ ・ジェイゾロフト ・パキシル |
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) | ・サインバルタ ・トレドミン ・デュロキセチン |
三環系抗うつ薬 | ・イミドール ・トフラニール ・アナフラニール ・スルモンチール ・ロフェプラミン塩酸塩 ・アモキサン |
※1
うつ病の症状が安定したり躁状態に入ったりした際に、EDを自覚することが多いようです。
薬剤性EDを疑う場合は抗うつ薬を自己判断で中止せず、医師に相談しましょう。自己判断で治療を中断すると、うつ病の悪化に繋がる恐れがあります。
(※1 参考)日本性機能学会/日本泌尿器科学会|ED診療ガイドライン
3.前立腺肥大症治療薬(薄毛治療薬)
前立腺肥大症や薄毛(AGA)治療に用いられる「5α還元酵素阻害薬」は、薬剤性EDを引き起こす恐れがあるとの報告が多くあります。
5α還元酵素阻害薬は、前立腺細胞の中でテストステロンをジヒドロテストステロンに変換する「5α還元酵素」の作用を抑える効果があります。
主な5α還元酵素阻害薬の製品名は下記の通りです。
- フィナステリド(プロペシア)
- デュタステリド(ザガーロ)
服用をやめることでEDの改善が期待されますが、中には服用中止後もEDが持続したという報告もあります(※1)。
風邪薬で勃たなくなることはある?
風邪薬の中に抗ヒスタミン薬が含まれている場合は、薬剤性EDを発症する恐れがあります。
抗ヒスタミン薬は、EDを引き起こす可能性がある薬剤だといわれています(※1)。
ただし一般的に、風邪薬は常用するものではないため、過度の心配は不要です。
「風邪薬で勃起力が落ちた」と感じる場合は、医師へと相談しましょう。
【ED診療ガイドラインより引用】薬剤性EDを引き起こす可能性がある薬一覧
日本性機能学会は「ED診療ガイドライン」にて、薬剤性EDを引き起こす可能性がある薬一覧をまとめています。
降圧剤 | 利尿剤(サイアザイド系、スピロノラクトン) Ca拮抗剤 交感神経抑制薬 β遮断剤 |
---|---|
精神神経薬 | 抗うつ薬(三環系抗うつ剤、SSRI、MAO阻害薬) 向精神病薬(フェノチアジン系、ブチロフェノン系、スルピリド、その他) 催眠鎮静薬(バルビツール系) 麻酔 |
ホルモン剤 | エストロゲン製剤 抗アンドロゲン薬 LH-RHアナログ 5α還元酵素阻害薬 |
抗潰瘍薬 | スルピリド メトクロプラミド シメチジン |
脂質異常症治療薬 | スタチン系 ィブラート系 |
呼吸器官・アレルギー用剤 | ステロイド剤 テオフィリン β刺激薬・抗コリン薬 抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン) プソイドエフェドリン |
その他 | 非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs) |
(出典)日本性機能学会|ED診療ガイドライン〈2012年版〉
上記の薬を服用中の場合は、薬の中止や減量、または他剤への変更によって改善が期待できます。
ただし、薬剤の種類によって影響の強さが異なるため、必ず医師と相談してください。
EDが気になる場合でも、自己判断で薬の量を調整したり、服用を中止したりすることは非常に危険です。
たとえば降圧剤の場合、EDの原因が降圧剤ではなく高血圧そのものであるケースなど、判断が難しいケースもあります。
症状がある方は必ず主治医や専門医に相談し、安全な方法で治療を進めましょう。
薬剤性EDの治し方
薬剤性EDを発症した場合、下記の方法で症状が改善する可能性があります。
- 原因となる薬の変更・中止
- ED治療薬の内服
詳しく解説します。
1.原因となる薬の変更・中止
ED診療ガイドラインは「薬剤性EDを疑った場合、薬剤の変更または中止を弱く推奨する」としています。
薬剤性EDは薬剤の副作用で起こるため、原因となる薬剤を変更・中止すれば治る可能性があります。
とはいえ、何かしらの疾患を治療するために薬を服用しているのであれば、そもそも服用の中止が難しいケースが多いでしょう。
EDを理由に自己判断で服用するのをやめると、持病の悪化を招く恐れがあります。薬剤性EDの可能性がある場合は、必ず主治医に相談しましょう。
2.ED治療薬の内服
薬剤性EDの場合、原因となる薬剤の変更・減量は困難な場合が多いため、ED治療薬の併用が検討されます。
ED治療薬を服用すると、30分〜1時間ほどで勃起しやすい状態になります。代表的なED治療薬は、下記の3種類です。
バイアグラ
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レビトラ
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シアリス
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特徴 | 世界的に知名度のあるED治療薬 | 即効性が高い | 作用時間が長い |
ジェネリックの名称 | シルデナフィル | バルデナフィル | タダラフィル |
効果が現れるまでにかかる時間 | 30分~1時間 | 15分~30分 | 1~3時間 |
効果の持続時間 | 3~5時間 | 5~8時間 | 30~36時間 |
食事による影響 | 受けやすい (空腹時の服用が推奨される) |
やや受けにくい | 受けにくい |
薬剤によって、効果の現れ方や持続時間などが異なります。医師と相談し、生活スタイルに合わせて選びましょう。
【医師からのコメント】
原因の薬剤を中止してしまうと持病の悪化を招く可能性が高いため、自己判断せず医師に相談するようにしましょう。
薬剤性EDを自力で治すことはできる?
薬剤性EDを自力で治すのは困難です。生活習慣病の改善やストレス解消で治るEDではないため、原因となる薬剤を中止するかED治療薬を内服するしかありません。
原因となる薬剤の自己中断は、持病の悪化に繋がり危険です。
そもそも医師でなければ、薬剤性EDであるかどうかや原因薬剤が何かを判断できないため、薬剤性EDを疑う場合はまず受診しましょう。
薬剤性EDに関するよくある質問
薬剤性EDに関するよくある質問をまとめました
Q.頭痛薬は薬剤性EDの原因になりますか?
一般的な頭痛薬では薬剤性EDのリスクは低いものの、ゼロではありません。
頭痛薬としてよく使用される非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)は、EDを引き起こす可能性がある薬剤として「ED診療ガイドライン」に掲載されています。
ただし、他の薬剤や関節炎などの交絡因子による可能性が高く、関連性は薄いとされています。
Q.風邪薬は薬剤性EDの原因になりますか?
短期間の使用であれば、薬剤性EDの原因となる可能性は非常に低いです。ただし、過剰に摂取した場合は薬剤性EDの原因となる可能性があります。
風邪薬に含まれることが多い「抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミンなど)」は、EDのリスクを高める可能性がある薬剤として「ED診療ガイドライン」に掲載されています。
鎮静作用や抗コリン作用により血流が悪化するためです。
また、鼻詰まりを改善する成分として配合される「プソイドエフェドリン」にも、血管を収縮させる作用があり、EDのリスクを高める可能性があります。
Q.新型コロナウイルスのワクチンは薬剤性EDの原因になりますか?
現在のところ、新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンが薬剤性EDを引き起こすという明確なエビデンスは報告されていません。
しかし、ワクチン接種後の副反応や体調変化が、一時的に勃起機能に影響を与える可能性は考えられます。
現状、ワクチン接種後にEDになった場合でも、それがワクチンによるものか、他の要因(ストレス、体調不良など)によるものかを判断するのは困難です。
まとめ
薬剤性EDとは、常用している薬の副作用として起こる勃起不全です。主に下記のような薬剤が原因となります。
- 降圧薬
- 抗うつ薬
- 前立腺肥大症治療薬(薄毛治療薬)
薬剤性EDは自力では治せないため、EDの症状が現れた場合は病院を受診しましょう。
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