高血圧とEDの関係は?降圧剤とED治療薬は併用可能?医師が解説

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更新日:2024年09月30日 公開日:2023年06月28日

この記事の監修者はユナイテッドクリニックの細田 淳英です。

日本人のおよそ3人に1人が該当するといわれている高血圧。


高血圧は、加齢や肥満、塩分過多などをきっかけに誰にでも発症のリスクがありますが、高血圧がEDを招くこともあるため注意が必要です。また降圧剤の副作用によりEDが悪化する可能性もあります。


本記事では、高血圧とEDの関係や、降圧剤とED治療薬の併用可否などについてまとめています。高血圧を予防してED発症を防ぐ方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

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この記事の監修者

ユナイテッドクリニック総医院長

細田 淳英

【経歴】

平成15年3月 帝京大学医学部卒業
平成15年5月 帝京大学医学部付属病院勤務
平成19年4月 帝京大学ちば総合医療センター勤務
平成22年4月 山王病院勤務
平成25年10月 池袋ユナイテッドクリニック開院

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高血圧はEDを招く

高血圧はEDを招く

高血圧はEDのリスク因子とされています(※1)。

高血圧で血管に負担がかかることで動脈硬化(動脈の血管が硬くなって弾力性が失われた状態)につながり、陰茎に流れる血液が減少するからです。

勃起に必要な血液が陰茎まで行き届かなくなれば、勃起の達成や維持が困難になります。

陰茎の血管は直径約1mmと非常に細く、動脈硬化の影響を受けやすいため、ED改善には高血圧予防が大切です。

実際に海外の研究にて、ED患者のうち41.2%もの方が高血圧を併発していたという結果もあります(※1)。

高血圧かつED気味の方は、高血圧がEDを引き起こしている可能性が十分にあります。

【医師からのコメント】

高血圧の方はEDになりやすいことがわかっています。

高血圧によって動脈硬化が進むと血管が細くなって血流も悪くなり、十分な血液が陰茎に行き届かなくなり、EDを発症しやすくなります。

(※1 参考)日本性機能学会/日本泌尿器科学会|ED診療ガイドライン

降圧剤は副作用によりEDを悪化させる可能性がある

高血圧の治療に用いられる「降圧剤」は、副作用によりEDを悪化させる可能性があるため注意が必要です。

一口に降圧剤と言っても、血管の収縮を抑えるものや血圧を上昇させるホルモンの産生を抑えるものなどさまざまな種類があり、全てがEDにつながるわけではありません。

とくに勃起機能低下の可能性が示唆されている降圧薬は以下のとおりです。

利尿薬 ベータ遮断薬 中枢性交感神経抑制薬
製品例
  • フルイトラン(※1)
  • ラシックス(※2)
  • アルダクトン(※3)
テノーミン アルドメット(※4)
働き 腎臓に働きかけて水分の排泄を促すことで、降圧作用をもたらす 自律神経に働きかけて血管の収縮を防ぎ、降圧作用をもたらす 自律神経に働きかて末梢血管の収縮を抑制し、降圧作用をもたらす
EDの悪化が懸念される理由 亜鉛(男性ホルモンの分泌を促す栄養素)の排泄が増加し、亜鉛不足を引き起こす可能性があるため 神経伝達を弱める作用により、性的刺激を感じても勃起命令が脳から陰茎へうまく伝わらない可能性があるため 神経伝達を弱める作用により、性的刺激を感じても勃起命令が脳から陰茎へうまく伝わらない可能性があるため

ギリシャで行われた男性31〜65歳を対象にした研究によると、降圧薬内服者のED罹患率が40.4%であったのに対して、非内服者のED罹患率は19.8%だったことがわかっています(※5)。

さらに、1種類だけ降圧薬を内服している患者のED罹患率が36.3%であったのに対して、2種類以上の降圧薬を内服している患者のED罹患率は46.7%であったことも報告されています(※5)。

既にED気味の方は、降圧剤の服用によってさらにEDが悪化する恐れがあるため、薬の種類には注意が必要です。

勃起機能への影響が少ない降圧剤もあるので、EDが心配な場合は医師に希望を伝えてみましょう。

【医師からのコメント】

一部の降圧剤においては、そのお薬自体が薬剤性のEDを引き起こす可能性があります。

ただし、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)と呼ばれるタイプの降圧剤は、EDへの影響が比較的少ないと言われています。

ニューロタン、ディオバン、オルメティック、ミカルディス、ブロプレスといった商品名の降圧剤がこれに該当します。高血圧のお薬を飲まれている方は、今一度ご自身のお薬の種類を確認するようにしましょう。

(※1 参考)添付文書|フルイトラン
(※2 参考)添付文書|ラシックス
(※3 参考)添付文書|アルダクトン
(※4 参考)添付文書|アルドメット
(※5 参考)NIH|Factors affecting the increased prevalence of erectile dysfunction in Greek hypertensive compared with normotensive subjects

高血圧でも飲めるED治療薬は?

高血圧を降圧剤で治療しているかどうかで、ED治療薬の服用可否は異なります。

降圧剤で治療をしている バイアグラ・レビトラ・シアリスなどが併用可能
降圧剤で治療をしていない ED治療薬は服用不可

それぞれ解説していきます。

降圧剤で治療をしている高血圧患者:バイアグラ・レビトラ・シアリスなどが併用可能

降圧剤で治療をしている高血圧患者は、バイアグラ・レビトラ・シアリスなどのED治療薬が併用可能です。

バイアグラ

バイアグラ

レビトラ

レビトラ

シアリス

シアリス

特徴 世界的に知名度のあるED治療薬 即効性が高い 作用時間が長い
ジェネリックの名称 シルデナフィル バルデナフィル タダラフィル
効果が現れるまでにかかる時間 30分~1時間 15分~30分 1~3時間
効果の持続時間 3~5時間 5~8時間 30~36時間
食事による影響 受けやすい
(空腹時の服用が推奨される)
やや受けにくい 受けにくい

なお、上記のED治療薬は降圧剤との併用が禁忌になっていないものの、「併用注意」となっています。

ED治療薬にも降圧作用があるため、降圧剤との併用で降圧作用が増強され、めまいや立ちくらみが起こる可能性があります。

併用自体は可能ですが、体質によっては危険を伴うため、必ず医師に相談してから服用しましょう。

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降圧剤で治療をしていない高血圧患者:ED治療薬は服用不可

治療による高血圧の管理がされていない方は、ED治療薬を服用できません。

ED治療薬 禁忌(服用できない方)
バイアグラ、レビトラ 治療による管理がなされていない高血圧(安静時収縮期血圧>170mmHg又は安静時拡張期血圧>100mmHg)の方(※1、2)
シアリス コントロール不良の高血圧(安静時血圧>170/100 mmHg)の方(※3)

高血圧の治療を受け、血圧が正常値にコントロールされればED治療薬を服用できるようになります。

(※1 参考)添付文書|バイアグラ
(※2 参考)添付文書|レビトラ
(※3 参考)添付文書|シアリス

ED改善には高血圧予防が大切!心がけたい生活習慣7つ

高血圧はEDを招くものの、高血圧の状態だとED治療薬の服用が制限されます。

よってEDを改善するには、生活習慣の見直しで高血圧を予防することが大切です。以下のような対策で、高血圧を予防しましょう。

  1. 塩分を避ける
  2. カリウムを積極的に摂取する
  3. 適切な体重を維持する
  4. 運動を習慣にする
  5. ストレスを発散する
  6. 飲酒量を抑える
  7. 禁煙する

順番に解説していきます。

塩分を避ける

日本人の高血圧の最大の原因は「食塩のとりすぎ」とされている(※1)ため、まずは減塩を心がけましょう。

高血圧治療ガイドラインでは高血圧患者に対して、塩分量を1日6g未満にすることを強く推奨しています。塩分6gは、計量スプーン小さじ1(5ml)程度です。

<食事での塩分目安>

  • ラーメン:1杯6g前後
  • 味噌汁:1杯1.2g前後
  • 食パン1枚(6枚切り):0.8g

ラーメンや味噌汁など、味の濃い食事は塩分を多く含む傾向にあります。普段から濃い味を好む方は、少しずつ薄味へシフトできるよう食生活を見直してみましょう。

(※1 参考)厚生労働省 e-ヘルスネット|高血圧

カリウムを積極的に摂取する

カリウムは塩分(ナトリウム)の排出を促す作用があるため、積極的に摂取するようにしましょう。

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、生活習慣病の予防の観点から成人男性1日当たりのカリウム摂取の目標量を3,000mg以上としています。

カリウムが多く含まれる食材は以下を参考にしてください。

<カリウムを多く含む食材>

バナナ 1本(200g)あたり360mg
いちご 1粒(15g)あたり170mg
アボカド 1個(200g)あたり590mg
さつまいも 100gあたり980mg
鶏ささみ 1枚(40g)あたり410mg

(※1)

例えばいちごであれば、18粒以上食べれば1日のカリウム摂取目安量を超えられます。

とはいえ、一つの食材だけで1日3,000mgのカリウムを摂取するのは難しいので、複数の食材を組み合わせながら上手にカリウムを摂取しましょう。

<例>
さつまいも150g(カリウム1,470mg)+鶏ささみ4枚(カリウム1,640mg)

食事だけで1日3,000mgのカリウムを摂取するのが難しい場合は、サプリメントも検討してみてください。

(※1 参考)公益財団法人長寿科学振興財 健康長寿ネット|カリウムの働きと1日の摂取量

適切な体重を維持する

過剰に分泌されたインスリン(糖の代謝を調節するホルモン)は、血中にカテコールアミン(交感神経系に作用を及ぼす神経伝達物質)の放出を促します。

このカテコールアミンには末梢血管を収縮させる働きがあり、血圧上昇につながります(※1)。

またそもそも、肥満の方は食事量が多く、塩分過多になりやすいことも問題です。

ED診療ガイドラインでは、BMIが増える(肥満になる)につれてEDのリスクが高まるとしています。高血圧予防とED予防の両方の観点から適正体重の維持は大切です。

無理なダイエットは禁物ですが、余分な脂肪を溜め込んでいる方は、食事の見直しや運動を習慣づけることで適正な体重を目指しましょう。

なお日本肥満学会では、BMI22を適正体重(標準体重)としています。

<BMIの計算式>
BMI = 体重kg ÷ (身長m)2

例えば170cmの人は、64kgが適正体重です。

(※1 参考)一般社団法人日本肥満症予防協会|肥満と高血圧

運動を習慣にする

運動をすると、血管内皮機能の改善と降圧効果が期待できます(※1)。

以下のような、「ややきつい」と感じる程度の有酸素運動を30分以上、定期的に(できれば毎日)行うのがよいとされています。

  • ウォーキング(速歩)
  • ステップ運動
  • スロージョギング・ランニング

健康維持のためにも、運動を始めてみるとよいでしょう。

なお、高強度の運動は一時的な血圧上昇につながるため、高血圧の方は注意が必要です(※1)。

高血圧の方は激しい息切れが繰り返し起こるような運動を避け、有酸素運動・筋力トレーニング共に軽めの強度から始めましょう。また、筋力トレーニングの際は息をこらえないよう気をつけてください(※2)。

(※1 参考)厚生労働省 e-ヘルスネット|高血圧症を改善するための運動
(※2 参考)参考厚生労働省|高血圧の人を対象にした運動プログラム

ストレスを発散する

ストレスにより血圧は上昇する(※1)とされているため、自分なりのストレス発散方法を見つけておくことも大切です。

趣味に没頭したり、好きな音楽やアロマを楽しんだりと、自分の性格に合ったストレス発散法でメンタル状態を良好に保ちましょう。

ストレス解消には、「睡眠」の質を高めるのも有効とされています。

眠る前のスマホ操作を控える、寝具をより快適なものにするなどして、朝スッキリ目覚められるように生活習慣を見直しましょう。

(※1 参考)慶應義塾大学保険管理センター|ストレスと高血圧

飲酒量を抑える

多量飲酒は高血圧の原因になります(※1)。普段からお酒をよく飲む方は、過度な飲酒を避けましょう。

1日あたりの飲酒量は、純アルコール換算で20g程度が適量(※2)とされています。

お酒の種類(アルコール度数) 1日の摂取量の目安
ビール(5%) 500ml(ロング缶or中瓶1本)
焼酎(25%) 100ml(グラス1/2杯)
ワイン(12%) 200ml(グラス2杯弱)
ウイスキー(43%) 60ml(ダブル1杯)

(※2)

無理に禁酒する必要はありませんが、飲み過ぎにはくれぐれも注意しましょう。


(※1 参考)厚生労働省 e-ヘルスネット|栄養・食事・血圧から見た許容飲酒量
(※2 参考)厚生労働省|アルコール

禁煙する

タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて血圧上昇を招きます。

高血圧治療ガイドラインでも高血圧患者には禁煙が推奨されており、1本の紙タバコで15分以上血圧上昇を引き起こすとの報告もあります。

喫煙習慣は脳卒中や心筋梗塞など、さまざまな病気のリスクも高めてしまうため、健康のためにも禁煙してみてはいかがでしょうか。

なお「少しずつ本数を減らし、最終的に0にする」という禁煙は失敗しやすい傾向にあるため、禁煙を決意したら思い切ってやめてみましょう。

まとめ

高血圧はEDを招くほか、重大な病気につながる可能性もあるため、生活習慣の見直しで高血圧を予防しましょう。

  • 塩分を避ける
  • カリウムを積極的に摂取する
  • 適切な体重を維持する
  • 運動を習慣にする
  • ストレスを発散する
  • 飲酒量を抑える
  • 禁煙する

なお高血圧患者でも、降圧剤で血圧値をコントロールできていれば、ED治療薬が服用可能です。ただし体質によっては服用が難しい場合もあるため、まずは医師の診察を受けましょう。

ユナイテッドクリニックではオンラインでの無料カウンセリングも受け付けているので、お気軽にご相談ください。

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